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07-08UCIトラックW杯第4戦コペンハーゲン大会 2008年2月15日~20日

                         デンマーク・コペンハーゲン


 今回の日本チームはメンバーに多少の変更があった。まず男子チームスプリントで、これまで第一走者を務めていた北津留翼が体調不良のため欠場。急遽、伏見俊昭が代役として第一走を走ることになった。今シーズンはケイリンに集中しているが、伏見は言わずと知れたアテネオリンピック・チームスプリントの銀メダリスト。当時は第2走者だったが、第1走としてどんな走りを見せてくれるのか、タイムにも注目だ。

 また前回のロサンゼルス大会で肩を負傷した飯島誠は、まだ万全の状態まで回復してはいないものの、まさに気合いと根性で今大会に参加。しかし、交代時のタッチが怪我をした肩に負担が大きいと判断、マディソンには出場せず、ポイントレースのみの出走に。そのため、飯島の代わりに盛一大のパートナーに指名されたのは、弱冠20歳・鹿屋体育大学の角令央奈。アジアレベルでの大会は経験があるものの、国際大会でマディソンを走るのは初めてという角。しかもW杯にはこれが初参加だ。オリンピック出場も夢ではなかったマディソンだが、前大会の不参加でポイントが取れなかったことはかなり痛く、その分、今回の角の走りには期待がかかる。


 今大会も今までと同様のプログラムで、初日は男子チームスプリントと、男子ポイントレースが行われた。

男子チームスプリントは伏見、渡邉一成、永井清史で臨み、タイム46043で9位。急遽で作られたチームだということを考えると、それほど悪い成績ではないのかもしれないが、欲を言えば45秒台は欲しかったところか。それでもランキングの面ではさほど影響はなさそうで、このあとの世界選手権で大きなミスさえなければオリンピック出場も安全圏に入ったと言えるだろう。

 男子ポイントレースに出場した飯島は怪我の具合が心配されたが、予選から気迫の走り。1ラップアップで20ポイント獲得し、4位で決勝進出を決める。決勝では残り80周を前に最初のアタック、さらに残り45周で再度アタック。この逃げが決まり、1ラップアップに成功。最終的に20ポイント獲得で10位となった。今回は中長距離種目の有力選手がちらほら欠場していたとはいえ、1ヶ月前に負傷し、まだ完治していない状態でこの果敢な走りは素晴らしいの一言。飯島の精神力には本当に脱帽だ。


 2日目は男子ケイリンと男子スクラッチ。

 男子ケイリンは、このW杯最終戦でもやはり予選・敗者復活戦は1着のみの勝ち上がりという厳しさだ。予選第1ヒートに出場の伏見は、スタートから積極的に世界チャンピオンのクリス・ホイのマークに出る。残り1周半でホイが飛び出し、伏見も反応するが、ダッシュについて行けず、千切れてしまう。最後は追い込んで2着に入った伏見だが、敗者復活戦回りとなる。

 敗者復活戦ではシェーン・パーキンス(オーストラリア)のマークから、相手が動かないと見るや積極策に出て、残り1周で先行。しかし逆にパーキンスに番手に入られる形となり、必死の逃げを打つ伏見だが、ゴール前わずかに交わされまたもや2着。今回も第2ラウンドには進めず、13位で終わった。


 男子スクラッチには盛が出場。30 周で争われる予選では終始速い展開でレースが進む中、盛が残り1周でスパートし、先行。このまま逃げ切れるかに思えたが、ゴール前で猛追してきた選手たちに抜かれ、順位は8位になったものの、決勝進出を決めた。決勝もハイスピードで、出入りの激しいレースとなり、盛はなかなか集団を抜け出すことができない。思うように前に出られないままゴールを迎え、順位は11位という結果になった。


 最終日は男子スプリントとマディソン。

 スプリントは渡邉と、欠場の北津留に代わって永井が出場した。予選200mTでは渡邉が1043413位となり予選を通過したが、永井は1066328位、予選敗退。

 1/8決勝に進んだ渡邉は、チームRAD-NET.DEのステファン・ニムケと対戦。残り1周で先行した渡邉は、追いすがるニムケを退け、そのまま逃げ切りで勝利。今シーズンのW杯で初めて1/8決勝を勝ち上がった。

 1/4決勝に進んだ渡邉の対戦相手はウクライナのアンドレイ・ビノクロフ。ここからは2本勝負だ。1本目は前走同様、残り1周で渡邉が先行し、ビノクロフが追うという展開に。ゴールは僅差の勝負となるが、渡邉は惜しくも差され、ビノクロフに1本先取される。渡邉にとって後のない2本目、今度はビノクロフが先行。渡邉は並びかけるも捲りきることはできず、そのままビノクロフが先着。2本とも落としてしまった渡邉は、5-8位決定戦に回ることに。4人で争うことになる5-8位決定戦では3着に入った渡邉だが、2着の選手が降着となったため、最終順位は6位となった。これまでで最高位のシングルリザルト獲得で、スプリントのポイントも上乗せすることができた日本。この種目でのオリンピック出場権も見えて来た。


 そして注目のマディソンは、盛・角のペアで予選第2ヒートに出場。経験の浅い角を盛がリードする形でのレースとなったが、なかなかいい位置をキープすることができず、ポイントも取れないまま、周回が過ぎて行く。終盤、何とか前に出るため盛が動こうとするが上手く行かず、結果は13位で予選敗退となってしまった。「何もできないまま終わってしまった…」と振り返る角。しかしテクニカルなマディソンを、ハイレベルな国際大会で初めて走ったという事実を考えれば、健闘の走りだったと言えるのではないだろうか。そして角をサポートしながら走った盛も立派だった。大きなポイントアップには繋がらなかったが、まだオリンピック出場の可能性も残されているマディソン。世界選手権は飯島と盛で出走すると思われるが、一発逆転を期待したい。


 これでW杯4戦全てが終了。残すはシーズン最後を飾る決戦、世界選手権のみとなった。この世界選で最終的なオリンピックの出場枠も決まる。世界選はW杯に比べポイント配分が高く、ここで上位に入れば一気にポイントを獲得し、ランキングアップが期待できるが、逆に言えばそれまで下にいた選手(国)にいきなり逆転される可能性も秘めている。それゆえ、世界選でのちょっとしたミスは命取りにもなりかねない。

 オリンピックの出場権という観点から世界選を考えると、まず危惧された男子チームスプリントはロサンゼルス大会でのポイントアップが効き、何とか出場権獲得圏内に入って来た。世界選で日本のすぐ下にランキングするロシア、ギリシャ、マレーシアを上回る順位を取れれば、ほぼ確定的だ。

男子ケイリンは現在微妙な位置にいるが、第2ラウンドに進出できれば安全圏と言える。

 男子ポイントレースは決勝に乗ることが必須条件で(参加人数によっては予選は行われない可能性もあり)、8位以内ならほぼ間違いなさそうだ。

マディソンも決勝進出が絶対条件だが(こちらも予選なしの場合あり)、一桁の順位、しかもなるべく上位を必要とするだけに、厳しい戦いとなることは否めないだろう。


 泣いても笑っても、オリンピック出場を賭けた最後の戦いとなる世界選手権。今シーズンの集大成として、選手たちには悔いの残らないレースを期待したい。


 尚、このコペンハーゲン大会の最終日にケイリン競技のイベント、インターナショナルケイリン08が行われた。この模様は別項にて紹介する。




○出場選手

伏見俊昭(JPCA・福島)

渡邉一成(JPCA・福島)

永井清史(JPCA・岐阜)

飯島誠(JPCA・チームブリヂストン・アンカー)

盛一大(愛知・愛三工業レーシングチーム)

角令央奈(兵庫・鹿屋体育大学)


リザルト

●男子1kmタイムトライアル

1位 PERVIS François FRA 1:02.084

2位 BOLIBRUKH Yevgen UKR  1:02.234

3位 LI Wen,Hao CHN 1:02.984 


●男子ケイリン

1位 HOY Chris  GBR

2位 LYNCH Ricardo  JAM

3位 TOURNANT Arnaud COF

13位 伏見俊昭 日本


●男子ポイントレース

1位 LIGTHART Pim DSB 49

2位 RATAJCZYK Rafal POL 37

3位 NEWTON Chris RCY 33

10位 飯島誠 日本 23


●男子チームスプリント

1位 フランス 44.247

2位 オランダ 44.404

3位 コフィディス  44.963

9位 日本(北津留・渡邉・永井)46043


●男子スクラッチ

1位 STROETINGA Wim NED

2位 MUELLER Andreas  AUT

3位 ARANGO CARVAJAL Juan Esteban  COL

11位 盛一大 日本


●男子スプリント

1位 SIREAU Kévin FRA

2位 HOY Chris  GBR

3位 VYNOKUROV Andriy  UKR

6位 渡邉一成 日本

28位 永井清史 日本 予選敗退


●男子個人追抜き

1位 ESCOBAR ROURE Sergi   ESP 4:24.781

2位 MARKOV Alexei RUS 4:26.773

3位 ROBERTS Luke  AUS 4:26.282


●男子団体追抜き

1位 イギリス 4:00.884 

2位 デンマーク 4:02.855 

3位 オーストラリア 4:05.897 


●男子マディソン

1位 デンマーク 8

2位 アメリカ  4

3位 オランダ  15(-1)



●女子スクラッチ

1位 VOS Marianne  DSB

2位 MACHACOVA Jarmila  CZE

3位 CHULKOVA Anastasiay  RUS


●女子スプリント

1位 KANIS Willy  NED

2位 PENDLETON Victoria  SIS

3位 GUO Shuang CHN


●女子団体追抜き

1位 ドイツ 3:30.685

2位 オランダ 3:32.666

3位 ウクライナ 3:34.882


●女子ケイリン

1位 KANIS Willy  NED

2位 REED Jennie  USA

3位 GLÖSS Dana  RAD


●女子
500mタイムトライアル

1位 GONG Jinjie  GPC 34.619

2位 CLAIR Sandie  FRA 34.653

3位 WELTE Miriam  GER  34.896


●女子個人追抜き

1位 ROMERO Rebecca  GBR 3:35.425

2位 SEREIKAITE Vilija  SAF  3:40.161

3位 HAMMER Sarah USA  3:37.086


●女子チームスプリント

1位 SCIENCEINSPORT.COM 33.944

2位 オランダ 34.001

3位 フランス 34.722


●女子ポイントレース

1位 WONG Wan Yiu   HKG  27

2位 SCHMIDT Trine   DEN  23

3位 CLIFF-RYAN Theresa  VBR 22



ワールドカップ第4戦が行われたコペンハーゲンのベロドローム。

北津留が欠場のため、第一走には伏見を起用。伏見、渡邉、永井で臨んだ男子チームスプリントは9位という結果に。


男子チームスプリント優勝はフランス。2位にオランダ、3位はフランスのトレードチーム、コフィディスとなった。


男子ポイントレース決勝。怪我をものともせず、果敢な走りを見せる飯島は、残り45周でのアタックでラップを決め、10位に入る。

男子ケイリン予選ファーストラウンド。1着のみの勝ち上がりと厳しい条件の中、クリス・ホイをマークという常套手段でレースを組み立てた伏見だったが、ホイのダッシュについていけず、2着。敗者復活戦回りに。

敗者復活戦では積極的に先行に出た伏見だったが、ゴール前でパーキンスに差され、またもや2着に泣いた。ここで敗退となった伏見の最終順位は13位となった。

男子スクラッチに出場した盛は、予選を8位で通過し、決勝へ。決勝では11位。

男子スプリント1/8決勝。渡邉が先行でニムケを下す。1/4決勝では勝ちあがれなかったが、最終順位は6位と上位につけ、ポイントも大幅アップとなった。

男子マディソンは盛と角のペアで出場。残念ながら予選敗退となり、決勝には進めなかった。



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